【弁護士 正野嘉人が答える身近な法律トラブル対談シリーズ!】
男女の問題。
それは法律事務所に持ちかけられることが多い相談の一つです。実際、どんな悩みでやってくる人が多いのでしょう?最近の傾向は?そして身を守るための対策は?
電話相談やコラム執筆などで、男女のリアルな問題に向き合っている恋愛アナリストのダヨリンことヨダエリさんから取材を受けたその一部始終をお伝えします!
▼浮気の証拠をつかめているケースは少ない
ヨダ 「私は電話相談の仕事をしているのですが、相談者さんにスッキリしてもらうことが大事で、心のケアを求められているところがある。一方、法律事務所は、もっと具体的な対策を求めてやってくる人が多そうですが」
正野 「そうですね。たとえば離婚に関して言うと、有利な形で別れたいという相談が多いです。二大ほしいものは、財産分与と子供の親権」
ヨダ 「わかりやすい!・・・モヤモヤした状態で来る人は少ないんでしょうか?たとえば、夫の不倫で相談に来る女性は離婚を目的にしている人が多い?」
正野 「いや、離婚の意志を固めているケースと、そこまでは決めていないケースが半々くらい。ただ、どちらにしても相手の女だけは許せない!という女性は多い(笑)」
ヨダ 「そこはハッキリしている(笑)」
正野 「でも、たとえば不倫で、証拠までつかめているケースは少ないです。何か事件が起きたから、というより、日頃の不満や我慢の積み重ねがあって浮気の疑いもある、というケースが多い」
ヨダ 「そうなんですね。てっきり、揺るぎない証拠をみつけて相談に来る人が多いのかと」
正野 「観光地で二人が肩を組んで歩いている写真くらいあれば証拠になりますけどね(笑)」
▼既に夫婦仲が破綻していたら「不貞」にはならない
ヨダ 「浮気や不倫の問題って、夫婦の関係性がどうであるかによって、第三者の意見の 見方も変わってくるところがありますよね」
正野 「そうですね。たとえば慰謝料がもらえるかどうかは、夫婦仲が冷えきっているかどうかによっても違ってきます」
ヨダ 「というと?」
正野 「夫婦として籍が入っていても、ほとんど別居状態の場合、既に破綻しているとみなされると、浮気されたところで損害は少ないだろう、と判断されるんです」
ヨダ 「なるほど!つまり、慰謝料などの要求が通りづらくなる」
正野 「逆に、結婚していなくても内縁関係だとみなされれば、浮気されたときに権利を主張できます。つまり、不貞になるかどうかはパートナーとの仲がどうであるかによるんですよ」
ヨダ 「どれくらい同居していれば内縁関係とみなされますか?」
正野 「5年くらい一緒に暮らしていれば、その内容によっては内縁とみなされます。同居してるだけじゃダメですね。実質的に夫婦と同じじゃないと」
ヨダ 「それを証明するには・・・」
正野 「メールや手紙、家賃の支払いの明細、女性が働いておらず男性が養っている、などの証拠があることが大事です」
ヨダ 「なんでも取っておく方が有利なんですね(笑)」
正野 「訴訟を起こす場合には(笑)」
▼男女による傾向の違い
ヨダ 「色々な相談を受ける中で、男女による傾向の違いは感じますか?」
正野 「女性の方が細かいことにこだわります」
ヨダ 「というと?」
正野 「離婚相談にくる場合でも、過去のことを事細かに覚えている。男性は覚えていない。『これこれこんなことをされた』と女性に言われて、男性は『そんな意図はなかった』とまでは言えるんです。でも、『そんなこと言うけどお前だって』と言い返そうとしても、具体的に何をされたか思い出せない。女性は事細かに記録していたりしますね」
ヨダ 「あぁ・・・女性は不満や不安があっても、ついその場では我慢しちゃうんですよね。で、それを記録することなどで紛らわそうとするけど、根本的な解決にはならないので、ずっと覚えている。そして、それが何度も続き、不満が積もりに積もって・・・」
正野 「最後に爆発。女性は家を出るとき、保険証まで持って出ちゃったりもします。夫の保険証でもあるのに。あとは、夫の通帳の額面までチェックして記録してから家を出たり。もちろんすべての女性がそうするわけではないけど、男性で女性の財産まで調べる人は滅多にいないですね」
ヨダ 「その用意周到さは、女性が自分を弱い存在だと認識していることの現れのような気がしますね・・・生き抜くために必死というか。逆に男性の大雑把さには強さを感じます(笑)」
▼収入が多い男性は額面を妻に知らせない方がいい?
正野 「男女の問題は末期になるとお金の問題になりますね」
ヨダ 「男性が取られるケースが多そうですよね。何か男性にアドバイスはありますか?」
正野 「収入は妻に知らせない方がいい(笑)」
ヨダ 「えっ?」
正野 「男性の方が収入が多くて離婚の可能性があるなら、ですが。皆、お金を取られそうになると自分の収入を少なめに言いますが、バレてしまったら、どうしようもない」
ヨダ 「確かに・・・」
正野 「実際、離婚調停で、妻に言われるがままに収入に関する証拠を全て出してしまった男性がいました。歯科医の男性で、妻は弁護士をつけたのに、彼はつけなかったので、何が不利になるかを分かっていなかったんです。裁判になってからは自分が弁護士としてついたんですけど」
ヨダ 「弁護士をつけると、そういう面でも守ってもらえるわけですね。他にアドバイスはありますか?」
正野 「悪いことをしたら謝った方がいい。ありがとう・ごめんを言われたら、恨みつらみは半減する」
ヨダ 「・・・真理ですね!その通りだと思います」 (その場にいたスタッフの男性陣、皆神妙な表情で頷く・・・)
正野 「夫婦であっても、他人に対するのと同じように、言葉を伝えた方がいい。夫婦だから何も言わなくても大丈夫、なんて思ってたらダメ」
ヨダ 「頷き過ぎてムチ打ちになりそうです!」
▼「妻とは別れる」は何度もメールで言わせよ
ヨダ 「既婚男性との不倫というと、奥さんが相手の女性を訴えるケースを想像しがちですが・・・」
正野 「相手の女性が訴えるケースもあります。たとえば、男性が『妻とは別れるよ』と言っておきながら、実際にはなかなか離婚しない場合。浮気相手の女性は、その男性に慰謝料を請求することができます」
ヨダ 「なるほど」
正野 「ただ、そのためには証拠が必要。『妻とは別れるよ』と書いたメールが一通あるくらいじゃダメ。何度も言ってないと(笑)」
ヨダ 「じゃあ、『奥さんと別れるんだよね?』とメールして、返信で『うん』と言わせる。このやりとりを、思い出したらする。何度もする!(笑)」
正野 「訴訟を起こすならね(笑)。でも日本の裁判で認められる慰謝料は安いから、ペイしないことも多いので」
ヨダ 「大体の金額は・・・」
正野 「その男性の稼ぎにもよるけど、普通のサラリーマンならせいぜい100万円くらい」
ヨダ 「確かに思ったより安いかも・・・訴訟を起こす労力や精神的負担を考えると。金額云々というより、何かしないと気が収まらない、という心理もあるのかもしれませんね」
◆取材を終えて
無いに越したことはない、男女のもつれ。でも、自分一人ではどうにもできない問題が起きてしまったとき、「相談してみる」というのは一つの方法。それによって安心したりスッキリしたりできるのは、電話相談にも法律相談にも共通している部分かもしれません。法律が絡んでくる問題に直面したら、正野先生の事務所を訪れてみては?
取材・文 ヨダエリ