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他人ごとじゃない!?「ネット社会に潜む 思わぬ落とし穴―実情と対策―」

2013/07/10カテゴリー コラム, 取材コンテンツ

【弁護士 正野嘉人が答える身近な法律トラブル対談シリーズ!】

 

インターネット上のトラブル。

 

すっかり人々の生活に不可欠なものとなり、近年はSNSも定着。しかし、FacebookやTwitterなど、本来はコミュニケーションを楽しむはずの場でトラブルに巻き込まれるケースも数多く見られます。誰もがいつの間にか被害者に、そして加害者になる可能性も・・・。

 

前回に続き、恋愛アナリストとして、また、パソコン通信からインターネットに親しんできたITコラムニストとして、新聞や雑誌などで多数の記事を手がけてきたダヨリンことヨダエリさんから取材を受けました。ネットに潜む危険と、その対策にまつわるトーク、ご一読ください!

 

 

▼有名人のプライバシー侵害は認められにくい?

 

ヨダ(以下Y) 「今ネットに潜むトラブルといえば、やはりSNSは外せないと思うのですが・・・二年前、某有名ホテルの飲食店スタッフがJリーガーと恋人のモデルが来店したことをツイートしてしまった事件がありましたよね」。
正野(以下S)「ありましたね」

 

Y「従業員が客について暴露するのがルール違反であるのはもちろんですが、人のプライバシーを簡単に拡散できる恐ろしさも含め、SNSを使う側の姿勢が問われた出来事だったなと思います。そこで、さっそく質問なのですが・・・」
S「はい」

 

Y「そもそも、こういうケースにおいて、都合の悪いことを暴露された側は暴露した側を訴えることはできるのでしょうか?」
S「プライバシー侵害ということにはなりますね」

 

Y「弁護士にまで相談するケースはあまりない?」
S「あまりないとは言えないでしょう。但し、有名人、特に政治家なんかだと、公的場面におけるプライバシーは普通の人より認められにくいので、法的手続を取っても、勝てるとは限らない。ただ、Jリーガーなど運動選手の場合、政治家や芸能人よりはプライバシーは守られるべき、という主張は通り易いかもしれない」

 

Y「なるほど、社会においてどんな立場にあるか、によっても違ってくるのですね」
S「日本はアメリカなどと違って、プライバシー侵害が相対的に認められにくいんですよね。病気、犯罪、財産・収入など、他人に知られたくない内容が暴露された場合なら別ですが」

 

Y「恋人と食事、という内容だけ見ると、それには当てはまらないですもんね・・・そう考えると、人はネガティブなことじゃなくても他人に知られたくないと感じる生き物なんですね。知られることによってネガティブなことが生じる、と感じているからかもしれませんが(笑)」

 

 

▼SNSでの被害を訴えるのは大変

 

Y「SNSといえば、Facebookにも個人のプライバシーが詰まっているわけですが・・・」
S「Twitterと違って特定の人にしか見られないですけどね」

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Y「その分、油断してしまう部分はありますよね。たとえば、AさんとBさんが、それぞれ同じ日に同じ飲食店で撮った写真を投稿したことで、『二人は会っているのか!』と周りにバレてしまったりする(笑)」
S「(笑)」

 

Y「このへんは、お互い気をつけましょう、というレベルの話だと思うのですが、中には誹謗中傷などを書かれてしまうケースもありますよね。別の人間になりすまして、嘘の書き込みをしたり」
S「ただ、Twitterもそうですが、Facebookも母体が海外にあるので、管理権がない日本支社に被害を訴えても、なかなか埒があかないんですよね」

 

Y「対応してもらえない場合は、どうすれば?」
S「まず、その記事を載せたサイトのプロバイダに、IPアドレスとタイムスタンプ(書き込みがされた日時)の開示を求める。任意に協力してくれない時は仮処分の手続をとらなければなりません。答えてもらえた場合、相手が使っているプロバイダが分かるので、今度はその接続プロバイダに、この日時に書き込んだ人の情報開示を求める。応じてくれない時は、先ずその情報の保存を求める仮処分を起こし、その後にその開示を求める裁判まで起こさなければなりません。それでやっと開示が得られたら、相手が特定できるので、今度はその直接の相手に差止めや損害賠償を請求する」

 

Y「かなり面倒そうですね・・・」
S「お金も時間も手間もかかります。母体が海外にある場合、訴状や申立書等も英訳して海外へ送達しなければならないし。仮処分決定や判決を取っても相手が任意に協力しない時は間接強制しかできないので、日本に財産のない海外の会社は痛くもかゆくもないということにもなる。実際にここまでやるのは、名誉回復のためにコストをかけられる有名人や資金のある会社くらい。一般の個人や零細企業などは、自分のブログやホームページで反論や事実を訴え続けるしかない」

 

Y「そういう状況に陥らないためには、人の恨みを買うようなことをしないのはもちろんですが、標的にならないよう、ネット上でのコミュニケーション術を磨いていくしかないのかもしれませんね」

 

 

▼利用規約は「免責事項」と「会費」を注視せよ

 

Y「ネットでの被害といえば、ネットオークションでの被害も、依然としてあるようですね。代金を振り込んだのに商品が届かない、とか」
S「被害者は裁判を起こすほどのメリットがないことも多いので、泣き寝入りになるケースが多いんですよね。裁判を起こさないと犯人の情報は開示されないですし。だから犯人も逃げちゃう」

 

Y「こういう事態を避けるには・・・」
S「相手の評価欄を必ずチェックすること」

 

Y「確かに!ワタシも、出品者の評価欄に『悪い』や『非常に悪い』が付いていると、入札するのを躊躇します」
S「ネットショップの場合は、利用規約を必ず見て、疑問があったら事前に確認することが大事です」

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Y「利用規約って、長くて分かりづらい文章が多いので、読み飛ばす人は多いと思うのですが・・・ここだけは必ず見ておいた方がいい!という箇所はありますか?」
S「うーん・・・免責事項と、会費に関する項目かな」

 

Y「免責事項は、◯◯については一切の責任を負いません、というような文章が書いてある箇所ですね。会費は、お金が発生するケースに関する説明。確かにどちらも大事ですね!」
S「不当な請求をされた場合、クレジットカードとか登録しちゃってたら一旦は引き落とされてしまうことも多く(「抗弁の対抗」はカード会社がすんなり認めないことが多い)、そうなると後から取り戻すのは困難なことも多いです。しかし、後払いの場合は、本当に裁判まで起こして請求してくるケースは稀ですね。特に、完全な詐欺をしているところほど、脅すだけ。裁判になって、身許がバレたらマズイから」

 

Y「なるほど!」
S「ただ、中には悪質業者に言われるがままにお金を出してしまう人もいる。業者としては、100人くらい脅して4、5人払ってくれれば採算が取れるので」

 

Y「だから成り立っているわけですよね・・・スパムメールなども、依然としてなくならないですもんね。たまに、すごく面白い文章もあって、なんという才能の無駄遣い!と思ったりしますが(苦笑)」

 

 

▼ソーシャルゲームで子供が勝手に親のカードを使った場合

 

Y「ネット関連の金銭トラブルといえば、昨年くらいからスマートフォンなどを使っておこなうソーシャルゲームの課金問題も槍玉に上がっていますよね。子供は親のクレジットカードを登録していて、ゲームで強くなるために課金アイテムをガンガン購入し、親は請求額を見て呆然、というような」
S「原則としては、未成年者の子供が単独で売買等の契約をしても、親権者はそれを取り消せます」

 

Y「そうなんですか!」
S「しかも、親に黙って契約したかどうかなんて確かめようがないからねぇ。親が後で取り消した場合、子供が現実に利益を受けた程度で、返還義務を負うとされているけれど、ゲームでは利益が残っているというのは難しいでしょう。」

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Y「あぁ・・・確かに」
S「ただ、親も仕方ないと思って一回でも払ってしまっていたら『黙示の承認』ということでダメかも。一回目から支払いを拒否していれば、主張は通るかもしれません」

 

Y「ということは、1万なら、と渋々支払った後、50万の請求に、それは無理!と支払いを拒否しようとしても難しい可能性もあるということですね。・・・しかし最近、子供が親の名前を勝手に使うケースって増えてますよね・・・」
S「でも、それを言ったら、女性が旦那や恋人と関係が悪くなって、クレジットカードを勝手に使いまくるケースなんて、昔からよくありますからね。どこかで使用を許可したり、カードを渡していたりすると、一定範囲で表見代理や黙示の承認が認められ易く、未成年の親以上に危ないと言えます。」

 

Y「男性が女性のカードを勝手に使っちゃうケースはないんでしょうか?」
S「・・・それはあまり聞いたことないねぇ(笑)」

 

Y「高収入の女性が増えても、それはないんですねぇ(笑)」
S「収入の差というより、社会の認識の差ですかね。男が女性名義のクレジットカードで買物しようとしたら、売り手の方が怪しむということが多いのかもしれない。」

 

 

◆取材を終えて

 

・・・と、最後はまたもや男女の違いにまつわる話に突入(笑)。しかしこの対談を通じて、ネットで生じるトラブルは、金銭にまつわる問題からコミュニケーションの問題に移行しつつある、という認識を新たにしました。インターネットが普及してから約20年。人々のITリテラシーが高まってきた証と言えるかもしれません。快適なネットライフを送るべく、法律のプロである正野先生の助言、ぜひ参考にしてみてください!

 

 

 

取材・文 ヨダエリ