ブログ

他人ごとじゃない!?「アヤシイ儲け話」

2013/07/31カテゴリー コラム, 取材コンテンツ

【弁護士 正野嘉人が答える身近な法律トラブル対談シリーズ!】

 

どこからか舞い込んでくる、儲け話。

 

いつの時代も人を騙してお金を奪おうとする人間はいるもの。「自分は大丈夫」と思っていても、実際に言葉巧みに誘われたら・・・?

 

他人ごとじゃないシリーズ、第三回。日経新聞土曜版で安全をテーマにした特集面を担当していたこともある、コラムニストで恋愛アナリストのダヨリンことヨダエリさんから今回も取材を受けました。人間心理を突いた巧妙すぎる手口の数々は、自分や家族の身を守るためにも、知っておいて損はないですよ!

 

 

▼アンケートに気軽に答えるのは危険?

 

ヨダ(以下Y)「悲しいかな詐欺はいつの時代にも存在するものですが。儲け話を振ってくる詐欺では、最近はどんなものがありますか?」
正野(以下S)「色々ありますよ。パチンコ打ち子詐欺、海外宝くじ詐欺(当選商法)、ネット懸賞詐欺、FX詐欺、ファンド型投資商品詐欺・・・」

ed_IMGP6796-1024x682

Y「パチンコ打ち子詐欺とは?」
S「必ず勝てる攻略法を教えるかわりに、情報料や会員登録料などの名目で金を振り込ませるというやつです。もちろん攻略法なんてデタラメです」

 

Y「お金をつぎこんだ側は『何度やっても勝てない!』と抗議しそうですが」
S「それは教えた通りにやってないからだ、と言えば済むわけです(笑)」

 

Y「・・・その手法、色々な詐欺に応用できますね!」
S「競馬等でも使われます。ギャンブルは詐欺の一ジャンルと言えますね」

 

Y「ギャンブル自体が、儲かるか損するか分からないモノにお金を払うという行為ですもんね。と考えると、ギャンブル好きな人は狙われやすいのでしょうか?」
S「損した分を取り戻したい、という心理が働きますしね。ちなみに、出会い系サイトや何らかのコミュニティで会員登録したとき、『興味のあるジャンル』でパチンコを選んでいると、こういう誘いのメールが届きやすくなる、というのはあると思います」

 

Y「アンケートにも慎重になった方がいいんですね・・・!」

 

 

▼高齢者が狙われやすいワケ

 

Y「詐欺は老若男女が気をつけるべきことではありますが、特に高齢者は狙われやすいと言われますよね。なぜなんでしょう?」
S「第1に孤立しているからでしょう。どこからも疎外されていて寂しく思っている人が多い。だから、親しげに話しかけられるだけで、それを嬉しいと感じてしまう」

 

Y「なるほど!確かに、寂しいか寂しくないかで、話しかけてくる人への感じ方は全然違ってきますね」
S「埼玉県に済む認知症の姉妹が、シロアリ退治をしますという詐欺にひっかかって、数回で何千万円取られたというケースもあります。認知症でなくても、高齢者は、世間一般の相場を知らないので騙しやすい、というのもあるでしょうね」

 

Y「ネットで詐欺の手口を調べたりもできないでしょうし・・・騙されないためには、自治体などが高齢者に訴えかけていくしかないのでしょうか。今でもよくポストに、◯◯詐欺にご用心!というチラシが入っていたりしますが」
S「それだけじゃダメでしょう。こういう詐欺にひっかかっていませんか?と、ひとりひとり話を聞いてあげるべきですね」

ed_IMGP6831-1024x682

Y「子供に知られたくない、と詐欺にあったことを隠そうとする高齢者も多いそうですしね。だからこそ、狙われやすいという説も聞きます」
S「その心理を悪用して『損を取り戻してあげる』と称して更に欺すという手口も増えています。救済措置として、契約を無効にする『取消権』を高齢者に認めるべきだ、という声もあります。ただ、そうすると、高齢者を正常な判断ができない者とみなすことになる。高齢者を無能者扱いするのか、という反論も出てくるわけです」

 

Y「確かに、一口に高齢者といっても、色々な方がいますもんね」
S「高齢者は、金融商品で狙われるため周りが気付きにくい、というのもあります。大きなツボや羽根布団がいきなり増えていたら、子供に気付かれることもあるでしょうけど、金融商品だとそれがない。最近特に増えているのが『水資源の権利』『有料老人ホームの利用権』『CO2排出権』などのファンド型投資商品や『公社債』などの怪しい出資の類いですね」

 

Y「周囲の家族に分りにくいという点も考えた上でやっているんだとしたら、本当に巧妙ですね・・・!」

 

 

▼詐欺師はマーケッター!?

 

Y「海外宝くじ詐欺は、『当選しました!』というメールがいきなり届くんですよね」
S「よく見ると『応募する権利が当たりました!』なんですけどね。この種の『当選商法』はよく読むと、『あなたの代わりに我々が応募してあげます』と言う内容にすぎませんが、そこは小さい文字やわずかなスペースしかなく、いかにも何億もの高額当選金やダイヤなどの高額商品が必ず手に入るかのように誤信せしめて、手数料や登録料をせしめるという手法です。(笑)。本当に代りに応募しているのかすら、疑わしいと言わざるをえません。」

 

Y「怪しい儲け話の中で、最近多い手口の内のひとつだと聞きました」
S「昔からよくある手口ですが、確かに最近また増えてきています。」

 

Y「そうなんですね!? あと、複数の人間が連絡を取ってくる手口も多いそうですが。人は何人もの人間から働きかけられると信じやすくなるのでしょうか?」
S「それはあるでしょうね。最近は販売業者のほかに勧誘業者や推薦業者が交互に働きかける『買え買え詐欺』も急増しています。実はよく耳を澄まして聞くと後ろでさっきの推薦業者の声が聞こえる・・・なんて例もあるそうです(笑)。また、何人もの人間といえば、販売会に来てください、と言って大勢の人間がいる所で買わせる手法もよくありますね。人がワイワイ大勢いると、特に欲しいモノじゃなくても勢いで買ってしまう。そんな集団心理を利用しているわけです」

 

Y「催眠商法というやつですね。買わないと損のような気持ちになってしまう・・・」
S「彼らはどうすれば人をひきつけることができるかを、ものすごく研究しています。販売会や口頭での誘いのみならず、メルマガのタイトルから、サイトに載せる動画の見せ方まで、本当に抜かりない」

 

Y「詐欺は、言ってみれば“マーケッター”ですね! その熱意、別のことに使ってほしいものです・・・」

 

 

▼詐欺は心理学も悪用する

 

S「詐欺師はアメリカで研究されている心理学なんかも駆使しています。たとえば、初対面の相手にコーラをタダであげて、そのあとで『実はこんなチケットを売りつけられて困っているんだ。買ってくれないか』と頼む。人には、恩を受けた相手には返さないといけないという心理があるので、断りにくくなるらしいです」
Y「なるほど・・・まずは安いモノをタダで与える」

 

S「他にもあります。『◯◯好きですか?』と訊き、『好きです』と答えた相手に『じゃあ、こんなチケットがあるんですが、買いませんか?』と誘う。すると、相手は断りづらくなる。なぜなら、人間には自分が言ったことに対して責任を取ろうとする心理が働くから」
Y「そんなところまで計算するんですね・・・!」
S「その他にも、『好意』を悪用するデート商法、『希少性』を悪用する『これだけ』『今だけ』商法などもあります」

 

S「こういったケースを詐欺で訴えるのはなかなか難しいです。言われた側は無理やり買わされたわけじゃなく、買わねばと自ら思わされただけだから。そんな巧妙なやり方は普通に商売でも使われていますからね」
Y「確かに。洋服屋などで、『これ、最後の一枚なんです』という台詞にグラつく人がどれほどいることか・・・」

ed_IMGP6883-1024x682

S「不要なモノ、余計なモノを買わされそうにならないためにも、こちらも心理学を勉強して、売り手の言葉には気をつけた方がいいかもしれない(笑)」
Y「どこからが詐欺でどこからが詐欺じゃないかって、本当に微妙な所にあるのかもしれませんね・・・」

 

 

◆取材を終えて

 

正野先生は、横浜中華街で焼き栗屋に道を尋ねたら、「これ買ってくれたら教える」と言われて渋々買ったものの、教えられた道順がデタラメだったという経験があるそう。こんな焼き栗詐欺(!)ならまだいいですが、笑い事では済まない手口は巷に溢れています。警視庁のサイト「振り込め詐欺等の手口」を読むなどして、様々な手口があることを知っておくことが大事かもしれません。正野先生も仰るように、高齢者は寂しさで詐欺への警戒心が緩む部分もあるので、ネットを使わないご両親などには口頭で教えてあげてくださいね!

 

 

 

取材・文 ヨダエリ